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大澤先生コラム【12月】
2019年12月04日 図書館
多数決の悲哀
大澤 源吾(Nov.25.2019)
テレビを見ていると世界の各地から支援票集めのニュースが飛び込んでくる。
香港から、トランプ大統領をめぐる米国から、あるいはEU離脱で揺れる英国からと。
民主主義(democracy)制度の根幹をなす多数決の原理は
2500年も前の古代ギリシャの都市国家で始まり、
権力が社会全体の構成員に合法的に与えられている政治形態を指す。
アテネの政治家ペリクレスが、それまで支配していた貴族会議から権限を奪い、
民主政治を徹底し、アテネの黄金時代を実現したことに由来する。
近世になって市民革命を起こした欧米諸国に勃興し、
20世紀半ばに至って漸くこの国の政治にも採用されたが、
そうした経緯を知らない若者が多くなってきた。
数の平等を求め過ぎたり、惰性に流されて大局的見地からの変革・進歩に遅れる危険も孕みやすい。
惰性的な判断の間違いを正し、衆愚政治の欠点を補うためには、
あえて火中の栗を拾う勇気を若者には期待したい。
衆に阿る意見や衆を欺く世論誘導意見の多い中から、
先見性を持った進展性のある正当な意見を選んで欲しい。
少し贅沢を言わせてもらうと、
密集都市と過疎地での代議士の数を住民人口比率だけで判断している様だが、
過疎地での風土・気候・習慣の異なる広域地域を同じように
まとめてしまう方法が真の平等になるのだろうか。
その延長でもう1つ。老化の淋しさ・悲しみは、
衆愚で押し切る力すらを喪ったことを実感する淋しさ・悲しみであるようだ。