摂食嚥下関連の研究会に参加してきました。行楽日和の週末にも関わらず、会場は熱心な参加者たちで埋め尽くされていました。その帰り道、新潟市の白山公園にふらりと立ち寄り、涼しそうな池の噴水を眺めてきました。
さて、「摂食嚥下機能や障害および、そのリハビリテーション」が注目されるようになったのは、近年になってからのことです。今では医療・福祉その他の分野の多職種が連携して学際的(既存の学問体系の枠組みが崩れて生じる新しい学問体系)な取り組みが行われていますが、私が歯科医になるための勉強をしていた何十年か前の学生時代には、そのような講義や実習など全くなかったどころか、「摂食」や「嚥下」という用語でさえ、めったに聞くことはありませんでした。
大学卒業後に研究をはじめた何年かの間は、「摂食嚥下(食物を認識して口に取り込み、歯で咬んで細かく砕いた後、飲み込んで胃に送るまでの一連の過程)」より狭い概念の「咀嚼(食物を歯で咬んで細かく砕く過程)」をテーマに取り扱う研究が、口腔生理学の分野では全盛を誇っていました。私自身も咀嚼に何らかの影響を及ぼすであろうと考えられていた歯根膜受容器(しこんまくじゅようき:歯根膜とは、歯と顎の骨を結びつけている線維性の組織で、そこに歯の感覚を感受する受容器が存在する)から咀嚼筋(咀嚼など口の開閉をするときに働く筋肉)に生じる反射について、調べていました。
その後、何年かの子育て休業をしているブランク期間に時代は移り変わり、咀嚼より広い概念である摂食嚥下を一連の流れとして捉える研究が主流になっていたのでした。ブランク期間を経て復帰した私は、何だか取り残されたような気分になりました。
陸に戻ってきた浦島太郎のように呆然としていた時に、私は今の本学の前身である新潟リハビリテーション大学院大学の立ち上げに協力する話が舞い込み、大学設置の準備段階のお手伝いという仕事から本格復帰へ向けて徐々に活動を再開したのでした。そして、平成19年4月に予定通り大学院大学(修士課程)を開学することができ、さらに平成22年4月に医療学部の増設にも成功し、本学は大学院大学から大学へと発展いたしました。また、現在に至るまでの間、大学院は1コース、学部も1専攻、新しく追加増設を行っています。
ところで、話が少し逸れますが、大学の教員は新設校(開学から完成年度まで)に専任教員(非常勤教員は除く)として着任する場合は、文部科学省の教員資格審査を受けて合格する必要があります。完成年度までは合格した職位(教授や准教授など)をもって、合格した授業科目のみ担当することができるのです。また、大学院修士課程の場合は、院生の研究指導の担当にふさわしいと判定された教員はMマル合教員(博士課程はDマル合)と称されます。しかし、完成年度(学部であれば開学から4年、大学院修士課程であれば開学から2年)を過ぎた後であれば、専任教員も文部科学省の教員審査を受ける必要はなく、各大学の採用基準に則っての採用および授業担当となります。
さて、最初の話題に戻りますが、摂食嚥下領域の研究会や学会の楽しみのひとつに、企業展示があります。各企業が工夫をこらして販売している、さまざまな最新の介護食や周辺の機器や器具… 見ているとワクワクしますが、なかでも介護食は、やっぱり自分の口で直接、試食してみることで、どんな宣伝文句や詳しい説明を聞くよりも、その製品の状態をよく理解することができます。今回もたくさんの試食と試供品をいただきました。