講義のひとコマから~味覚と風味~そしてコロナ

医療学部の全専攻生対象の選択科目として、摂食・嚥下障害学概論を担当しています。身近な話題や興味あるテーマなどを取り入れ、将来に就く職業如何にかかわらず、日常生活でも役に立つような内容を盛り込むように工夫をしています。また、スライドやプリント、教科書等を用いた平面的な講義のみならず、自ら体験する場面等も設けて印象に残るよう試みています。

先日は、“おいしさ”をテーマにした講義を行いました。おいしさは、摂食嚥下障害のある方や高齢者などで食が細くなっている方々にとって、食の改善に繋げる重要なポイントであります(最も重要なことは、「安全であること」ですが、それと同じくらいに「おいしいこと」、「適切な栄養を補給すること」などを重要ポイントとして挙げることができます)。おいしさは食欲に繋がり、食べたい、食べようという、積極的な摂食行動となり、むせや誤嚥の頻度(低下)にも影響することが確認されています。

講義では、おいしさを構成する要素として、さまざまな項目について解説しました。その中で味覚と風味の違いについても触れました。これは、実際に自分自身で体験するのが一番よくわかります。りんご味、オレンジ味、マスカット味、いちご味、マンゴー味、ピーチ味、メロン味…などと書かれた包み紙に入った飴を、鼻をつまんだ状態で舐めてみると…りんご味、オレンジ味…はするでしょうか??あれ?○○味って舌で感じていたのではないの?と不思議に思うかもしれません。○○味に鼻って関係するの?と思うでしょう。実は、○○味は味覚ではなく風味です。舌で感じることができるのは味覚(味覚には、塩味、酸味、甘味、苦味、うま味の5種類の基本味があり、多くの食物の味は、これらのいずれか、あるいはその組み合わせとして表現されます)ですので、鼻をつまんで飴をなめると、舌で飴の甘さは感じられるものの、匂いが関係する風味の○○味はわからなくなるのです。講義では学生たちに実際に飴をなめて体験してもらいました。

風邪をひいて鼻が詰まると、食事がおいしくなくなるのも、上記の理由が少なからず関与しています。最近では、新型コロナウイルス感染症で、嗅覚・味覚障害が起こるといわれていますが、「基本味の障害による味覚障害」なのか「嗅覚(匂い)障害の影響による風味障害」なのか、「両者が混在している」のか、区別して症状を訴えている人がどの程度いて、それらの割合がどうなっているかについては、調べた限りデータが見つからないのでわかりません。