本学では、学生生活の満足度を向上させるために、毎年、在学生を対象にアンケートを実施しており、多肢選択の設問のみならず、自由記述欄を設け、それに対し担当者が回答し学生にフィードバックする仕組みを設けています。1カ月以上前のことになりますが、私に割り振られて回答した内容を下記に掲載しました。「学費が高い」という学生からの意見に対する回答です。
実は、ちょうど本日(5月20日)、文科省による「高等教育の修学支援(負担軽減)新制度説明会: 高等教育の修学支援新制度に関し、本年度の機関要件の確認申請に関する手続きや確認に必要な事項について」が開催されています。こちらは非常に慌ただしいタイトなスケジュールで導入が決まっていて、書類を準備する大学も大変です。
タイトなスケジュールについては説明会開催についてもそうであり、開催の案内がメールで届いたのが5月14日(火)、参加申し込み締め切りが5月16日(木)、資料がメールで届いたのが5月17日(金)、そして今日5月20日(月)が説明会です!その間にメールの修正や資料の修正連絡もあり、今回の件を見ても文科省のバタバタ感が伝わってきました。
さて、以下が本学の学生満足度調査自由記述欄に記載されていたひとつの意見とそれに対する私の回答です。
意見: 学費が高い
回答: 学費負担をできるだけ少なくというのは、皆さんや保護者様の切実な願いであると思います。しかし、現状は下記の通りで、本学も精いっぱい努力して設定した金額となっていますので、引き続きご理解のほど、よろしくお願いいたします。
●国立大学の学費vs私立大学の学費(一般論)
→私立大学の学費は国立大学の学費に比べて高いです。また、我が国の私立大学の学費は諸外国の大学の学費に比べても高いです。
私立大学に対する国からの補助金(経常費補助)の割合は、現在10%を下回っています。1980(昭和55)年度の補助割合は29.5%でしたが、その後は国の予算上の制約から下降を続け、1990年代からは10%台で低迷しながらも、じわじわと減り続け、2015(平成27)年度には10%を下回り9.9%となりました。一方、国立大学は国からの運営費交付金収入が約50%もあります。
さらに、「図表でみる教育」OECDインディケータ(2015年版)によると、我が国の大学生1人当たり公財政支出額(国などからの補助金額)は年間69万円で、OECD各国平均の99万円を大きく下回っています。これを私立大学で見た場合、わずか17万円(国立大学218万円の約13分の1)しか国から補助が出ておらず、OECD各国のうち最下位になっています。そして、日本は、高等教育の授業料がデータのあるOECD加盟国の中で最も高い国の一つであり、過去10年、授業料は上がり続けています。
→このような現状において、私立大学の収入は、4分の3以上を学生からの納付金(学費)に頼っています。本学のような教育中心の大学は、研究大学のように、外部機関から多額の研究費を引っ張ってくることも困難です。国の助成が期待できないとなると、ますます学費に頼らざるを得なくなるため、学費を安くすることがいっそう難しくなります。
●本学と同分野の私立大学の学費vs本学の学費
→本学の学費は同分野の他私立大学の学費よりも安く設定してあります。
本学は平成22年度に医療学部を立ち上げました。以来10年が経ち、物価は上昇しましたが、本学の学費は10年前に設定した金額のまま、値上げせずに同額を維持してきています。当時、学費を設定する際に、担当者が同分野の他大学の学費や近隣の大学の学費を数多く調査しました。調査をもとに、本学の学費は、他私立大学より若干安い妥当な額を設定したと伝え聞いています。
さらに、本学の学費には臨床実習における必要経費(宿舎料金など 平均50万円程度)が含まれています。これら費用を学費の外に位置付け、学費一覧の中に金額を含めずに、別途徴収している大学も多くあります。
また、本学は、休学時は学費を徴収しないほか、原級留置時も学費を軽減する制度を設けていますが、休学時に学費を徴収したり、原級留置時にも通常の学費を徴収したりする大学もあります。
このように表面上の学費のみならず、隠れた費用支払いについても、できるだけ皆さんの負担が軽くなるように、精いっぱい努力しています。引き続きご理解をよろしくお願いいたします。
なお、家計の事情(急変含む)等がある場合には、学費の分納や延納の相談にも臨機応変に対応いたします。
*学生の皆さんへお願い
せっかく支払った学費を無駄にしないよう、授業には、やむを得ない事情がある場合を除き、できるだけ全て出席しましょう。その他、教員の指導や学生支援などについても、有効活用してください。
参考.国の高等教育負担軽減制度が来年度から開始
国が導入を予定している高等教育負担軽減制度(私立大学の授業料は約70万円を上限に減免)は、2020年度の入学者だけでなく、同年度、2年次~4年次に進級する学生も対象になります。所得要件と学習状況や意欲などにより、支援の可否が決定されるとのことです。