(在学中の功績をたたえて受賞された卒業生たち)
令和7年3月7日(金)、時折、雪がちらつく中、「本学の国際教育研究棟(F棟)」において、令和6年度卒業証書・学位記授与式を挙行いたしました。医療学部卒業生・大学院リハビリテーション研究科修了生の皆さん、たいへんおめでとうございました。以下に、学長告辞を掲載いたします。
三寒四温を繰り返しながら春が近づいてまいりました。本日ここに、関係の皆様のご臨席のもと、令和6年度新潟リハビリテーション大学卒業式・学位記授与式を挙行できますことをたいへんうれしく思います。卒業生、修了生の皆様、卒業・修了おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。
そして、卒業生、修了生のご家族の皆様におかれましても、本日のご子息・ご息女の成長された姿に、感慨もひとしおのことと存じます。ご卒業をお慶び申し上げますとともに、これまで、本学に賜りましたご支援とご協力に、改めて深く感謝申し上げます。
思い起こせば、学部卒業生の皆さんの多くが入学された令和3年は、新型コロナウィルス・パンデミックによる影響が、学生生活にも重くのしかかった年でした。入学直後の4月に実施した新入生研修会は、当初予定していた2日間から半日に短縮して実施することになり、また、3密を避けるために、全員が同じ会場に集合することができず、小グループに分けて、会場を分散してリモートでつないで、という異例の対応から始まりました。さらに、当時の2年生が入学した令和2年の春は緊急事態宣言の最中だったため、研修どころか登校もできない状態であったことから、皆さんたちと一緒に、また新たな気分で学生生活に臨めるよう、1年遅れの新入生研修会に皆さんたちと一緒に参加していただきました。
研修では、「仲間や教職員とコミュニケーションをとること」のほかに「自分の将来を考え大学での学びの目的意識をもつこと」を目標に活動しました。その時に抱いた新鮮な気持ち、大学生活への希望や意欲、覚えていますでしょうか。しかし、その後も、授業、課外活動やアルバイト等も大きく制限され、皆さんが思い描いていた大学生活とは程遠いものが続いたかもしれません。そのような中でも皆さんは、一生懸命に勉学に取り組まれ、今日のこの日を迎えられました。
これまでの皆さんのご努力に対し、まずは心から深い敬意を表します。皆さんが経験されたことのひとつひとつが、これからの人生において決して無駄にはならないはずだと信じています。本学で学んだこと、経験したこと、身に付けたこと、成長したこと、楽しかったこと、うれしかったこと、苦しかったこと、つらかったことなど、改めて、自らの歩みを振り返ってみてください。
さて、学年が上がり、対面での授業や活動の割合が多くなってきても、毎日の体温測定や手洗い、消毒はしばらく必須になり、人と人との距離を保って、マスク越しにしか友人や教職員と接することができない日々が続きました。「これまで通り、これまで同様」というスタイルが、あらゆる面で通用しなくなりました。今置かれた環境の中で考えられる「より良い方策」を選択して対応していかなければならないことを痛感させられました。そのような環境下で、授業や実習はもとより、行事や地域との交流、研究活動などが思うようにできないという困難な状況の中でも、皆さんは、お互いに協力し合って、これを乗り越えてきました。戸惑いや不安に満ちた大学生活の中でも自分なりの目標を見つけ、一歩、一歩、大切に日々を歩む努力をされて今日の日を迎えることができたことと思います。
図らずも、将来皆さんが困難な壁にぶつかるようなことがあっても、乗り越えていく力になる多くのことを学ばれたに違いありません。私はそんな皆さんを誇りに思います。
新型コロナウイルス感染症は、私たちの生命や生活、価値観や行動をはじめ、社会全体に広範かつ多面的な影響を及ぼしました。まさに予測困難な時代の到来であり、答えのない問題にどう取り組んでいくかという課題を私たちに提起し続けています。そして、この感染症は、令和5年の5月より感染法上の5類に移行され、新しいフェーズに入りました。
ポストコロナ期における新たな学びの在り方についても検討が進められ、国の教育再生実行会議では、答えのない課題を解決するためには、一人ひとりの多様な幸せの実現はもちろん、社会全体の幸せでもあるウェルビーイング(Well-being)の理念の実現を目指すことが重要であると結論付けています。この幸せとは、経済的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさや健康も含まれ、このような幸せが実現される社会は、多様性と包摂性のある持続可能な社会でもあるとのことです。
そして、こうした社会を実現していくためには、一人ひとりが自分の身近なことから他者のことや社会の様々な問題に至るまで関心を寄せ、社会を構成する当事者として、自ら主体的に考え、責任ある行動をとることができるようになることが大切だと提唱しています。
このことは災害の経験によっても得ることができたと思います。令和4年の夏には、近隣地域に豪雨災害が発生し、令和6年の元日には能登半島地震が発生しました。災害からの教訓としても、人と人との繋がりの大切さ、助け合いの重要性が実感できたことと思います。そして、それらの経験も含め、安全・安心な社会の実現への貢献が、大学の大きな使命の一つとしても浮かび上がってきています。
たとえば、被災地域に広く寄せられるさまざまな支援に象徴されるように、多様な力を繋ぎ合わせていくことで、より力強く大きな支えとなっていきます。本学でも防災・減災への取り組みを進めています。1年生を対象に村上市の防災専門員による防災教育を継続しています。豪雨災害や地震の際には、学生たちが、被災地域や避難所等で、自主的な支援活動を献身的に行ってくれ、村上市からも表彰状や感謝のお言葉をいただいております。
さて、これから、新たな道に進んでいかれる皆さんには、急激な社会の変革に呑み込まれることなく、広い視野で多角的に状況を分析し、専門的な見地から、課題を解決する能力を培っていってください。
新しい社会が始まり、私たちは、授業の受講だけでなく、大学という場所において、仲間と語り合い、交流するといった営み自体が皆さんの成長過程にも大きく影響している重要性に改めて気づかされました。いずれにせよ、未知なる感染症の脅威を経験してきた皆さんは、新しい価値観や考え方が養われたことと思います。それは必ず将来に生きていきます。
皆さんがこれから向かっていく社会は、少子高齢化や人口減少が、さらに急激に進んでいき、私たちの生活環境や就業形態も、これまで以上に大きく変化していきます。AIやロボットが多くの仕事を代替するようになるでしょう。しかし、そのような社会こそ、人と人とが真摯に向き合うことが大切になると思います。本学で学んだ皆さんは、人と接する際に、相手の心を読み取って共感し、優しく温かい心を通わすことができるはずです。
本学園では、創設以来「人の心の杖であれ」を理念に掲げ、知識や技術だけではない、細やかな心遣いで患者さまやご家族をはじめ周囲の方々をしっかりと支えていけるような、人材を育成してきました。これまで皆さんが培ってきた知識、技術、そして優しさや思いやりをさらに成長させ、どんな場面でも決して諦めないで挑戦を続けていってください。皆さんには、人と人とが、支え合って生きていくことの大切さを胸に刻んで、これからの人生を歩んでいって欲しいと思います。そして、いつまでも不断に学び続け、未来を切り拓いていき、大きく飛躍して多方面で活躍されることを心より祈念し、私の告辞といたします。
本日はまことにおめでとうございます。
令和7年3月7日 新潟リハビリテーション大学長 山村 千絵