新潟リハビリテーション大学
 
令和4年度卒業証書・学位記授与式(3/10)

令和4年度卒業証書・学位記授与式(3/10)

3月10日(金)、朝方の雨もあがり、春の心地よい空気に包まれた「本学の新棟(国際教育研究棟:F棟)」において、令和4年度卒業証書・学位記授与式を挙行いたしました。医療学部卒業生・大学院リハビリテーション研究科修了生の皆さん、たいへんおめでとうございました。以下に、学長告辞を掲載いたします。

(あわせて、大学院リハビリテーション研究科修了生の一部及び研究科専任教員の一部の集合写真を掲載いたしました。)

 

雪解けが進んで淡く色づいてきた風景に、春の息吹を感じられるようになりました。令和4年度の医療学部卒業生の皆さん、大学院リハビリテーション研究科修了生の皆さん、卒業、修了おめでとうございます。本日、この良き日に、久方ぶりに、卒業生のご家族の方々のご臨席を賜り、式典を挙行できますことは、この上ない慶びであり、教職員を代表して、心より感謝申し上げます。

ご家族や関係者の方々におかれましては、新型コロナウイルス感染症による大学生活や学業への影響、そして、昨年の夏に本地域を襲った豪雨などを含め、様々に心配されながら、本日のご子息・ご息女の成長された姿に、感慨もひとしおのことと存じます。ご卒業をお慶び申し上げますとともに、これまで、本学に賜りましたご支援とご協力に、改めて深く感謝申し上げます。

本日の式典は、1年前に完成したばかりの新しい校舎で挙行しております。卒業生の皆さんは、入学してからしばらくは、自主学習や実技練習をする場所の確保に苦労もあったと思います。この場所は、そういった皆さんの声をもとに、実現した空間になります。来月以降は、2階も整備が終わって使えるようになりますので、卒業後も、折に触れて本学に足を運んでいただき、後輩たちと交流したり指導に当たったりしていただけましたら幸いです。

さて、今、皆さんの胸中には、在学中の様々な思い出が駆け巡っていることでしょう。楽しかったことだけでなく、苦しかったこと、辛かったこともたくさんあったかもしれません。

3年前に突然、未知の感染症が拡大し、世界中で大混乱が発生しました。わが国でも、緊急事態宣言が発令されるなどして、大学も長期間、休校とせざるを得なくなりました。その後は、新しい生活様式という名のもと、さまざまな制限がある生活を余儀なくされました。一方では、リモート授業など、新しい教育方法も取り入れられるようになり、世の中の目まぐるしい変化に、大学生活の展開も、皆さんが入学当初に想像していたものとは、まったく異なるものとなったのではないでしょうか。

感染症の流行により、「これまで通り、これまで同様」というスタイルが、あらゆる面で通用しなくなりました。今置かれた環境の中で考えられる「より良い方策」を選択して対応していかなければならないことを痛感させられました。そのような環境下で、授業や実習はもとより、行事や地域との交流、課外活動、研究活動などが思うようにできないという困難な状況の中でも、皆さんは、お互いに協力し合って、これを乗り越えてきました。これまで、幾多の困難な状況にも耐え抜いていただいた皆さんの努力、それから、感染拡大防止体制へご協力いただきましたことに、厚く御礼を申し上げます。

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生命や生活、価値観や行動をはじめ、社会全体に広範かつ多面的な影響を及ぼしました。まさに予測困難な時代の到来であり、答えのない問題にどう取り組んでいくかという課題を私たちに提起し続けています。そして、この感染症は、約2か月後には感染法上の5類に移行され、新しいフェーズに入っていきます。

ポストコロナ期における新たな学びの在り方についても検討が進められ、国の教育再生実行会議では、答えのない課題を解決するためには、一人一人の多様な幸せの実現はもちろん、社会全体の幸せでもあるウェルビーイング(Well-being)の理念の実現を目指すことが重要であると結論付けています。この幸せとは、経済的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさや健康も含まれ、このような幸せが実現される社会は、多様性と包摂性のある持続可能な社会でもあるとのことです。

そして、こうした社会を実現していくためには、一人一人が自分の身近なことから他者のことや社会の様々な問題に至るまで関心を寄せ、社会を構成する当事者として、自ら主体的に考え、責任ある行動をとることができるようになることが大切だと提唱しています。

今回のコロナ禍は多くの方々にさまざまな課題を突き付けていると同時に、これまでにない学びや経験も、もたらしてくれました。大学ではリモート授業が普通に行われるようになり、学会や学外との会議もウェブ会議方式が主流となりました。教職員は、在宅勤務やリモートワークも柔軟に取り入れる体制となり、意図せずしてSociety5.0(超スマート社会)が目指す、AIやIoTの社会実装が加速されたように思えます。国連は、2015年に、SDGs、すなわち持続可能な開発目標を掲げましたが、Society5.0はSDGsが掲げるゴールに通じるものでもあります。こういった流れを捉え、政府もデジタルトランスフォーメーションを一気に推し進めようとしています。

これから、新たな道に進んでいかれる皆さんには、急激な社会の変革に呑み込まれることなく、広い視野で多角的に状況を分析し、専門的な見地から、課題を解決する能力を培っていってください。本学でも、SDGsの取り組みを推進し、また、来るべき社会で必須となるデータサイエンスリテラシーを全ての学生に提供していきます。

新しい社会、新しい生活様式が進む一方で、私たちは、授業の受講だけでなく、大学という場所において、仲間と語り合い、交流するといった営み自体が皆さんの成長過程にも大きく影響している重要性に改めて気づかされました。いずれにせよ、この時代を経験した皆さんは、新しい価値観や考え方が身についていくでしょう。それは必ず将来に生きていきます。

皆さんがこれから向かっていく社会は、少子高齢化や人口減少が、さらにいっそう進み、私たちの生活環境や就業形態も、大きく変化していきます。AIやロボットが多くの仕事を代替するようになるでしょう。しかし、そのような社会こそ、人と人とが真摯に向き合うことが大切になると思います。本学で学んだ皆さんは、人と接する際に、相手の心を読み取って共感し、優しく温かい心を通わすことができるはずです。

本学園では、創設以来「人の心の杖であれ」を理念に掲げ、知識や技術だけではない、細やかな心遣いで患者さまやご家族をはじめ周囲の方々をしっかりと支えていけるような、人材を育成してきました。これまで皆さんが培ってきた知識、技術、そして優しさや思いやりをさらに成長させ、どんな場面でも決して諦めないで挑戦を続けていってください。

社会はあらゆる面から、新しく生まれ変わろうとしています。新しい社会では、誰ひとりとして取り残されることのないよう、共生社会の構築が期待されます。皆さんには、その牽引役を果たしていただきたいと思います。すなわち、困難な状況下にあっても、偏見や差別をせず、常に他者に対してあたたかい手を差し伸べられる人になってください。本学の理念である「人の心の杖であれ」は、SDGsの根本にある、他人を思いやる心にも通じます。皆さんには、人と人とが、支え合って生きていくことの大切さを、このような時代だからこそ、なおさら胸に刻んでこれからの人生を歩んでいって欲しいと思います。そして、いつまでも不断に学び続け、未来を切り拓いていき、大きく飛躍して多方面で活躍されることを心より祈念し、私の告辞といたします。

本日はまことにおめでとうございます。

令和5年3月10日     新潟リハビリテーション大学長 山村 千絵