大澤先生コラム【3月】

 

 

 

古老の足掻き   大澤 源吾(March 25.2020)

 

連日連夜の間断のないテレビ放映と新聞紙面で、

新型コロナウィルス肺炎流行の様子が伝えられている。

日本国内だけでなく今や世界各国に拡まり、殊にイタリア北部では患者の急激な多発によって、

始発点の中国河北省武漢市と同じように、医療崩壊という苦境にすら晒されているらしい。

 

これまでの臨床側の経験的解析から、重症になるのは高齢者で、

特に高血圧や糖尿病、あるいは心疾患などの

基礎疾患を持っておられる方の死亡率が高いということが少しずつ分かってきた。

若年者には全く自覚症状もない感染者も居て、

さらにほかのヒトへの感染媒体になっていることもあるらしい。

だからテレビでの解説や議論では、初期から、みんなの不安を払拭するために、

「何故検査を早くしてくれないのか」という意見が強かった。

 

 

得体の知れない重症のコロナ肺炎感染者を隔離・看護する専門的な施設と、

そこで働く医師や看護師などの医療従事者の数は当然、当初は限られたものであるし、

簡単に組み建てたり、増員したりできる性質のものでもない。

限られた施設にいきなり多数の重症コロナ肺炎患者が押し寄せたら

医療崩壊を来たすことは明白である。

 

 

災害医療という特殊な場面でトリアージ(triage)という治療患者の選択が行われることがある。

当初から重症者に見切りをつけて治療を諦めてしまうものである。

限られた医療資源によって最大の効率を求めるための選択である。

イタリア北部でもトリアージが行われているらしい。

 

今日、これまでわが国の政府の新型肺炎対策としてとられてきた方針は、

冷静な専門家の意見を採り入れたものと推察し、

重症患者への対応を別け隔てなく継続できる方向を目指したもので、

その進捗と成功を心から祈るのみである。

 

改めて、リハビリ教育においても医療従事者の一員としてこうした対処方法を理解し、

実行できる若者を育てたい。