SDGsへの取り組み|新潟リハビリテーション大学

高校などでの大学講義体験「折れない心の作り方」


高校などでの大学講義体験「折れない心の作り方」

皆様は「折れない心」を持っていますか?私自身、心が折れて、辛く苦しい経験をしたことがきっかけで、「折れない心」に興味・関心がわき、今まで研究を進めてまいりました。もしかすると、私と同じように心が折れた経験があり、「折れない心」について知りたい人がいるかもしれませんので、ここで少しご紹介したいと思います。

「折れない心」は専門用語にすると「レジリエンス」と言われます。この「レジリエンス」という言葉は、2011年3月11日に発生した東日本大震災という出来事の後で、日本でよく聞かれるようになりました。あれだけの大きな災害の中、一時的に気持ちが落ち込んだけれども、すぐに立ち直って復興に向けて動き始める人々がおられました。このような人々の特徴の1つとして「レジリエンス」の高さが挙げられました。

アメリカ心理学会のホームページを参考にご紹介すると、「レジリエンス」が高い人には、以下の4つの特徴があると言われています。

①現実的な計画を立て、それを実行することができる。

②自分自身を前向きに考えることができ、自分の強みや能力に自信が持てる。

③コミュニケーションと問題解決の技術(スキル)を持っている。

④強い感情や衝動をコントロールできる。

いかがでしょうか?4つ全てを持っている人はなかなかいないのではないでしょうか。だからこそ、これら4つの特徴を意識して生活することが重要ではないかと私は考えています。ではこれらの特徴を身につけるには、どうしたら良いのでしょうか?こういうときこそ、心理学の知識がとても役立ちます。

私は「折れない心の作り方」というテーマで、高校だけでなく、小学校・中学校・高校の先生方、保健師・介護士・保育士の方々、子どもたちを支援されている方々が集まる研修会などでお話する機会をいただくことがあり、「折れない心」への関心の高さを感じております。ぜひ一緒に「折れない心」について考えてみませんか?

ポジティブ心理学とは?

私は大学院の修士課程を受験する際、ストレスをテーマにした研究計画を考えていたところ、ご指導をお願いしたいと考えていた先生から「ありきたりだね」と言われ、研究テーマに非常に困ってしまいました。そして、書店で心理学の書棚を眺めていたところ、現在、関西福祉科学大学にいらっしゃる島井哲志先生が編集された「ポジティブ心理学」という本に出会いました。その本には、それまで読んできた心理学の本には載っていないような魅力的な内容がたくさん詰まっていて、これが私のターニングポイントになりました。

修士論文のテーマには、その本に載っていた「フロー体験(時間が経つのも忘れるぐらいの集中状態)」を選び、その後は「レジリエンス(折れない心)」、「グリット(やり抜く力)」などのポジティブ心理学の内容を研究テーマにしております。修了した大学院生とは「ワーク・エンゲイジメント(仕事に対する熱意・没頭・活力の3つがそろった状態)」の研究を行いました。現在は、東京成徳大学の石村郁夫先生を中心とした研究グループに入れていただき、「コンパッション(慈悲、思いやり)」の研究に携わっております。

ポジティブ心理学と聞くと、とても怪しげな学問ではないかと思う人もいるかもしれません。しかし、とても科学的な学問であり、どのようにしたら人は幸せになれるのか、どのようにしたら充実した人生になるのか、どのようにしたら社員はいきいきと働いてくれるのか、などを科学的に追究しています。今までの心理学は、心に悩みを抱えた人の状態をマイナスの状態ととらえると、マイナスからゼロの状態に戻すことを目指してきました。しかし、ポジティブ心理学は、マイナスからゼロではなく、マイナスからプラスの状態にすることを目指しています。ということは、心に悩みを抱えていない人に対してもゼロからプラスの状態(より幸せな状態)にすることができる学問といえます。つまり、すべての人に役立つ心理学だと私は考えています。

このポジティブ心理学の知識や技術を多くの方々に知っていただき、少しでも多くの方々が幸せで、充実した人生になるような世界を目指していきたいと思います。

担当講義PICKUP

ポジティブ心理学【学部】

「〇〇心理学」の中の一部でポジティブ心理学の内容を紹介することはあると思いますが、「ポジティブ心理学」という科目が開講されている大学は実はそう多くはありません。講義の内容としては、幸せとは何か?、うれしい、楽しいといったポジティブな感情にはどのような機能があるのか?、自分の長所を活かすように生活していくとどうなるのか?、楽観主義者と悲観主義者はどう違うのか?、何かに夢中になる体験は自分にどのような影響を与えるのか?、などなど日常生活に活かすことができる知見を一緒に学んでいきます。

関連リンク

リハビリテーション心理学専攻(RP)

研究者情報

掲載日:2022年09月27日