SDGsへの取り組み|新潟リハビリテーション大学

COPD患者の呼吸リハビリテーション継続を促す支援

中川 明仁
リハビリテーション学科 リハビリテーション心理学副専攻長 講師

COPD患者の呼吸リハビリテーション継続を促す支援

COPDという病気を聞いたことはあるでしょうか?正式には慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)という病名です。たばこ病ともいわれています。たばこを何年にもわたり吸い続けることで肺に炎症を起こし、気管支や気道が狭くなって、息を素早く吐き出すことが難しくなります。主な症状としては、労作時の呼吸困難感、慢性の咳や痰があげられます。COPDの認知度は必ずしも高いとはいえず、日本には潜在的に500万人近くの有病者がいるとされていますが、実際に治療を行っているのは22万人程度ともいわれています。

呼吸リハビリテーションはCOPDをはじめとした呼吸器疾患等により低下した呼吸機能や身体機能の回復、維持を目指し、患者さんが社会生活を送れるように支援する医療です。呼吸機能が低下すると活動が制限されます。活動が制限されると身体の健康に加えてうつ傾向が高まるなど心の健康にも影響があり、呼吸機能の低下は心身の健康にとっての悪循環を形成します。呼吸機能の低下により心身の不調を来している患者さんの支援には心理学で学ぶ知識が役に立ちます。また、リハビリの継続には患者さんの特性に合ったリハビリ計画を立てることが肝要です。特性の把握の際に種々の心理検査を用いながら、リハビリの場で心理アセスメントを実践しています。

心理学の学びに対するイメージは?

“心理学を仕事にしています”と自己紹介すると、必ずといっていいほどかけられる言葉があります。「人の心を読み取れるんですね」「私のカウンセリングをしてください」などなど。私自身、高校生の頃に心理学の学びを志したころは似たようなイメージを持っていました。しかし、実際に学びを始めてみると、180度違う現実を目の当たりにします。ラットを対象にした行動観察、アンケート調査の統計学的な分析、人間の記憶やものの見え方に関する実験。もちろんカウンセリングの授業もありましたが、私が心理学の中で特に興味を惹かれたのは、「客観的なデータに基づいて結果を判断する」というプロセスでした。

このような考え方は仕事を離れた日常の場面でもとても役に立ちます。与えられた情報を鵜呑みにするのではなく、「根拠は何なのか?情報源となるデータは?」と一度立ち止まって考える習慣も心理学の学びを通して身に付きました。大学の学びでは「自分で考える」という姿勢を求められます。たどり着いた答えが、たとえ間違っていたとしても、答えにたどり着くまでの自分で考えるプロセスが大切である、ということを学生には常に伝えています。心理学の学びに対して真摯に向き合えば、このような冷静で批判的な思考も身に付きます。それは自分の人生をより豊かなものにするための一助となると私は信じています。

中川 明仁|リハビリテーション学科 リハビリテーション心理学副専攻長 講師

 

学位の取得年 博士(心理学) 2014年(平成26年)
最終学歴 同志社大学大学院 文学研究科心理学専攻 博士後期課程
所属学協会等 日本心理学会、日本健康心理学会、日本パーソナリティ心理学会、日本行動科学学会、日本呼吸ケアリハビリテーション学会、日本ヘルスプロモーション理学療法学会

担当講義 PICKUP

健康・医療心理学Ⅰ・Ⅱ

本講義では、日々直面するストレスについて、ストレスが生成されるメカニズム、ストレスへの対処のあり方、およびストレスと精神的健康との関連について心理学的観点から解説しています。ストレス以外にも心身の健康を維持または阻害する要因はさまざまに存在します。それらについての解説も行います。また近年、医療の現場では多職種が連携して患者さんへの治療に臨むのが一般的となっています。多職種が連携する中で、心理職に求められる役割やスキルについて、実際の事例を取り上げながら受講生とともに考えていきます。

関連リンク

リハビリテーション心理学専攻(RP)

研究者情報

掲載日:2022年09月14日