SDGsへの取り組み|新潟リハビリテーション大学

高大連携の取り組みと園芸療法

藤本 聡
リハビリテーション学科 作業療法学副専攻長 講師

高大連携を通じた園芸療法の学び

本学がある村上市内には3つの高等学校と1つの中等教育学校があります。その中の一つ「村上桜ヶ丘高等学校」と本学は平成28年10月に高大連携協定を締結し、本学に進学を希望する優秀な生徒さんに対し「高大連携特待生制度」を設け、毎年この制度を利用して入学する学生がいます。
村上桜ヶ丘高校では、農業系を選択した生徒さんが授業で栽培した花などを自らが販売し、経済についても学ぶという実習があり、本学にも年に数回、花の販売に来てくれていました。最近は新型コロナウイルスの影響でせっかく育てた花々も販売に行けないという地元の新聞記事を見つけ、2020年度より本学職員が村上桜ヶ丘高校へ伺い、花を購入しています。
購入した花は学内環境の整備・美化も含め、学生が作業療法学専攻の授業(基礎作業学実習Ⅱ)の一環として花壇に植え替えを行っています。

作業療法の治療的手段である作業活動の中に「園芸療法」があります。園芸療法とは、園芸活動を通して、病気や怪我、高齢化のために心身に障害を持つ人々の治療やリハビリテーションを行う手段として用いられています。
授業では、陶芸、紙工芸、皮革細工、押し花などの作業活動も体験し、学生は作業種目を治療手段として用いるときの身体的、心理・精神的効果について分析し、適用する基礎を習得します。

認知症サポーター養成講座と認知症カフェの取り組み

作業療法士は、身体機能へのアプローチとともに、精神機能(認知機能含む)へのアプローチも専門性を発揮できる領域です。新潟リハビリテーション大学では、認知症サポーター養成講座と認知症カフェ「リハ大オレンジカフェ」を、2017年6月より作業療法学専攻の教員により開催していました。しかし、新型コロナウイルスの影響で、2020年2月1日を最後に、開催できなくなりました。それまでの活動について、ご紹介いたします。

認知症サポーター養成講座は、地域住民の方に認知症について理解していただき、認知症の当事者や家族の方のサポーターを養成する意義があります。そのため、多くの認知症サポーターを養成することを厚生労働省が推し進めています。そこで、新潟リハビリテーション大学では、作業療法学専攻の教員が中心になり、年間に1回の頻度で実施していました。最初に認知症サポーター養成講座を開催した時には、村上市の全地域から49名の市民の方と本学の学生が参加して、用意した席が満席になりました。地元の新聞社の方も取材に来られ、記事として掲載していただきました。その後も、なるべく多くの認知症サポーターを養成するために継続して実施していました。

そして、認知症カフェの意義としては、高齢者の方の外出の機会になり閉じこもり防止や人との交流する機会、認知症カフェでの活動に参加することによる認知症予防の効果、認知症に関する情報交換の場になることなどが挙げられます。新潟リハビリテーション大学では、月に1回の頻度で開催していました。認知症カフェには、最初のころは6名と少ない参加者でしたが、だんだん参加者が増えていき、多い時には41名の方に参加していただきました。参加人数が増えた要因としては、村上市介護高齢課の方により「市報むらかみ」に掲載していただいたことや他の認知症カフェでの宣伝、参加者の口コミのお陰だと思います。参加人数が増えて大盛況となり、これ以上参加者が増えると会場(本学食堂)に入りきれなくなると心配していたところで、新型コロナウイルスの影響により開催ができなくなりました。

認知症サポーター養成講座と認知症カフェを実施することは、地域住民の方への社会貢献とともに、学生が参加することにより認知症政策について理解を深める機会となり、教育の場になっていました。それが実施できなくなり、とても残念に思っています。新型コロナウイルスが落ち着きましたら、認知症サポーター養成講座と認知症カフェを再開したいと考えています。

作業療法士の仕事は、人のためになり、やりがいのある仕事

作業療法士は、あまりご存じでないでない方もいらっしゃると思いますけど、理学療法士とともにリハビリテーション職の一つです。
作業療法士は、身体および精神に障害のある患者さんあるいは予防のために、作業を活用して、治療(作業療法)を行います。ここでの作業とは、革細工、木工、陶芸、織物、モザイク、籐細工、紙細工、マクラメ、銅板細工、手芸、描画、料理、園芸、音楽活動、散歩・外出、ボールゲーム、ダンス・踊り、遊びなど、多種のものを活用いたします。患者さんの障害や治療目的、好みなどに合わせて、使用する作業を決めます。
例えば、コロナ禍で外出の機会が失われ、外での趣味活動ができない場合には、楽しみやストレス発散のために、自宅でも行うことができて、患者さんの好みや障害に合わせた作業により、生き甲斐を感じていただけるように支援(作業療法)を行います。

作業療法士の仕事は、患者さんのためになる、やりがいのある仕事です。

藤本 聡|リハビリテーション学科 作業療法学副専攻長 講師
学位の取得年 博士(医学) 2020年(令和2年)
最終学歴 福島県立医科大学大学院 医学研究科医学専攻博士課程
所属学協会等 日本作業療法士会、日本老年医学会、日本社会精神医学会、臺式簡易客観的精神指標研究会(UBOM 研究会)

担当講義 PICKUP

高齢期作業療法学[学部]

高齢期作業療法学では、身体機能や精神機能の機能回復と介護予防について、講義しています。高齢者の支援として大切なことは、身体的に健康であるとともに、生き甲斐を感じて、いつまでも家族と一緒に生活できるように支援することです。生き甲斐を感じるとは、家庭内や地域での役割があることや、趣味となる作業があることなどにより生き甲斐を感じます。生き甲斐を感じながら、末永く家族と一緒に生活が続けられるような支援方法(作業療法)を学んでいただく科目です。

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作業療法学専攻(OT)

日本作業療法協会

掲載日:2022年03月03日