SDGsへの取り組み|新潟リハビリテーション大学

村上市の自然環境における日常生活関連動作の学外実習

柳澤 博
リハビリテーション学科 作業療法学専攻 助教

村上市の自然環境における日常生活関連動作の学外実習

作業療法士の担う役割はじつに多様で、活躍のフィールドも多岐にわたります。
そのひとつとして「手段的日常生活動作(IADL:Instrumental activities parallel of daily living)」への支援があります。
IADLは「電話の使用・金銭を管理して買い物をする・薬を管理して服用する・洗濯機を使用して洗濯する」など、応用的な日常生活活動です。その一つである「交通機関を利用した外出」は、対象者のQOL(生活の質)の向上のため、作業療法アプローチの中でも重要な位置づけとなっています。
このIADLの支援に際しては、対象者が実際に生活する土地の特性を十分に理解し、地域性に寄り添ったケアが求められます。

従いまして、この授業では、本学の在する村上市の地域性を考慮したIADLへの支援のあり方について実践的な理解を深めるために、学外での実習体験の機会を学生に提供しています。

村上市は、瀬波海岸および瀬波温泉、また中心部の伝統的な町屋造りの町並みなど、豊かな自然環境や観光資源に恵まれた場所です。この取り組みは、教科書という“マニュアル”通り一辺倒の方法だけでなく、この地域で生活を営む方々のリアルな生活をイメージし、実生活に即した支援の在り方を学習するプログラムの必要性について考慮した結果、生まれました。
具体的な内容としては、軽度の身体障害を有した地域在住の高齢者の余暇活動として「瀬波海岸周辺の散策」を想定し、学生同士が高齢者役・介助者役とに分かれて、バスの乗降や階段の昇り降り、不整地歩行といった動作の支援方法をグループ内で話し合い、試行錯誤しながら練習したり、支援の際に留意すべき点について学んだりするというプログラムになります。

学生からは「教室という“密な空間”から離れ、開放的な自然環境のなかで、とても実践的なリハビリテーションの学習体験ができた」と好評で、学生からの授業アンケートでは総合満足度5.0(最高値)との評価を得ています。

「好き」 は、ちから

このページを見ていただいている皆さん、そのなかで、自分の将来進むべき道を考えている高校生の方に質問があります。

あなたの“好き”は、なんですか?

日本作業療法士協会による作業療法の定義は以下のようになっています。
――『作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す』――

これは「人の数だけ“作業”があるし、“作業”の数だけ作業療法がある」ということです。
たとえば、お散歩をする おしゃべりをする 園芸をする 音楽を奏でる ゲームで遊ぶ など、無数の“作業” そして無数の作業療法があります。
その過程で作業療法士は自分自身の特性、それは園芸や楽器演奏の経験だったり、話好き・ゲーム好きだったりという個性ですが、それらを活かすことができるのです。
(これを自己の治療的利用といいます)

ですので、あなたにとっての意味のある作業、つまり あなたの「好きなこと」を作業療法では治療に結び付けることができます。
「好きなこと」を活かして仕事をし、患者さんたちの「ありがとう」を集めていくことができる・・・ そんな懐の深さが作業療法の魅力だと私は思っています。

そこで いま一度質問させてください。

あなたの“好き”は、なんですか?

その「“好き”のチカラ」を活用して、人を 社会を 今よりほんの少しだけ、良い状況にできるかもしれません。

柳澤 博|リハビリテーション学科 作業療法学専攻 助教

 

学位の取得年 修士(保健学) 2016年(平成28年)
学歴 学習院大学 経済学部 経済学科

文京学院大学大学院 保健医療科学研究科

所属学協会等 日本作業療法士協会

出張講義

出張講義 「脳の遊びリテーション」

人間の脳には、驚くほど複雑かつ多彩な機能が備わっています。

例として「言語を操る」 「記憶する」 「複雑な計算をする」 「ものごとを順序だてて上手く遂行する」 「ジェスチャーをしたり、それを理解したりする」 など、高度な情報処理を日常的に脳はこなしています。 それらを高次脳機能(こうじのうきのう)といい、その働きが妨げられることを高次脳機能障害といいます。

そして作業療法では、身近な「遊び」を通じて、これらの高次脳機能障害を治療することがあります。

昨年2021年、長岡市の中学校で、その「遊びリテーション」を生徒さんたちに体験していただくための出張講義を実施しました。

笑って、しゃべって、体も動かして… ついでに? しっかり勉強もできて、体験者の皆さんたちの笑顔があふれる素敵なイベントになりました。

担当講義PICKUP

中枢神経疾患作業療法治療学 演習

この講義では、主に脳卒中(脳内で出血がおきたり、血管が塞がってしまう病気)などの「中枢神経疾患」の患者さんを対象にしたリハビリテーションの介入方法について、演習を通して学びます。

様々な疾患の特徴とそれに対応した治療法など専門的な医療知識と技術を、少人数教育の利点を活かしたグループワークで楽しく取得してもらうことを心がけています。

医療系国家資格である作業療法士は「手のリハビリ」のプロフェッショナルです。

臨床場面では、その「手のリハビリ」の一つとして、手の動きを向上させる作業療法である「上肢機能訓練」を行いますが、この授業では、そこで用いられる訓練用具を自分たちで実際に作り、使用法や治療に際して注意する点を学ぶなど、医療現場で活躍するための実践的な内容を扱っています。

関連リンク

作業療法学専攻(OT)

日本作業療法士協会

掲載日:2022年10月25日