回復期病棟での理学療法士の役割
2009年に理学療法士の免許を取得して、はじめは介護老人保健施設・デイケアセンターで勤めていました。リハビリテーションの病期でいう、いわゆる生活期という時期です。そこではご病気をされて、入院生活つまり回復期を経て、生活期へ移行した利用者様をマネジメントする役割をしていました。
2年後には病院勤務となり、回復期病棟への配属となりました。そこから10年ほど回復期病棟で脳血管疾患、また脊髄損傷の患者様のリハビリテーションを中心に携わってきました。理学療法の分野でいうところの、中枢神経系疾患に多く携わる時間がありました。そこで、中枢神経の複雑さ、脳の面白さに気づき、回復期の理学療法にのめりこんでいきました。
回復期病棟でのリハビリテーションの役割は、身体機能の改善、社会復帰にあります。身体機能の改善には現在、理学療法の世界ではさまざまなアプローチが混在しています。徒手療法、物理療法、先進医療ではロボットスーツなども出てきています。それぞれ何が効果的なのか、ガイドラインが出来始めているところです。しかしながら、どのような疾患にも必ず効果がある、理学療法はありません。それは、当たり前ではありますが、人間が複雑な存在であるためです。そのため、理学療法の効果にも差が出てしまうのはある意味当然です。
そんな中、現職である教員という立場で、脳の複雑さ、人間の個別性を考えながら、誰もがなるべく標準的な理学療法が行えるように教育をしています。10年ほど現場で養った臨床思考を、よりシンプルに考え、わかりやすく学生に伝えるよう努力しています。10年分の想いが、学生に伝わり、新たな発見や気づきを促し、学生の意欲、知的好奇心を促すことが今後の理学療法の発展につながると信じています。
これからの時代に必要なのは人間力
これからの時代、既存の仕事の50%はAIに代わると言われています。しかし、理学療法はそれに代わりません。つまり、ずっと存在しつづける仕事と言われています。なぜなら、人間を診る仕事だからです。人は人に触れられると脳からセロトニンという幸せホルモンが出るようになっています。リハビリテーションで人に触れ、回復を促す理学療法士は人にしかできないのです。
そんなこれからの時代に理学療法士に求められものは、人間力だと思います。AIに勝るものは人間力だと確信しています。学力も、もちろん大事ですが、人間力が大事な時代になってきます。人と触れ合い、共感する、コミュニケーションをする、そんな人間の力を大事にしていきたいと思っています。私自身も日々人間力を磨き、学生の人間力を伸ばす教育を日々模索しています。
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担当講義PICKUP
基礎運動療法学Ⅰ・Ⅱ
理学療法の最も重要なアプローチ方法のひとつに運動療法があります。本講義は解剖学、生理学、運動学、病理学などを基礎的な部分を背景に、理学療法士が行う運動療法の講義をします。本講義は2年次の科目ですので、1年生で身に着けた知識をしっかり復習し、より臨床に近い知識を身に着けられるように授業展開しています。主な内容として、関節可動域運動、筋力増強運動、脳のシステム障害に対するアプローチなど、実技を通して伝えています。
人体の構造、システムを様々な視点からとらえ、より多角的に理学療法をとらえられるようなカリキュラムとしています。時に、人間の不思議な力に触れながら、理学療法の魅力を伝えるように努めています。
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