認知症カフェ(リハ大オレンジカフェ)の活動
私たち新潟リハビリテーション大学作業療法学専攻は、平成29年7月に認知症カフェ(名称:リハ大オレンジカフェ)を始めました。私たちのいる村上市はその高齢化率が当時、36.3%と、新潟県全体(31.3%)と比べて、かなり高い地域でした(令和4年にはそれぞれ、40.1%、33.4%となっています)。高齢化の進む村上で、地域に貢献できることはないかと始めたのが、リハ大オレンジカフェでした。
認知症カフェは3つのタイプ、①情報提供や学びを主たる目的としたタイプ、②特にプログラムは用意されていない居場所を主たる目的としたタイプ、③家族と本人のピアサポートを主たる目的としたタイプ、に分けられるとされています。私たちは、リハ大オレンジカフェが②のタイプでありかつ、地域で暮らす高齢者の居場所・活動の場として、集い楽しい時間を過ごせる場となることを目標としています。そのために、私たち作業療法士の用いる「作業(occupation)」の持つ意味を大切にし、参加者(人)の人生の時間が意味のある時間・活動で占められることを目指しています。
リハ大オレンジカフェは、月に1回土曜日の午後に大学構内で開催されています。(残念ながら、現在は新型コロナウイルス感染症予防のため、休止中です。)カフェ自体の開催は2時間ですが、会場は開始の30分前から開放しています。開始後、30分ほどは、茶菓をいただきながらの自由な歓談タイム(この時間が1番にぎやかで、これだけでも十分ではと思ってしまいます)です。その後1時間20分ほど大学が提供する活動を行います。最後に参加の感想等のアンケートを行い終了となります。
活動の内容は、ボランティアの方による手話、歌に合わせた体操、クイズ、手工芸、カラオケを用いた合唱、回想法(色かるた、昔の品物)など多様です。そして大学で行うカフェならではの内容として、学生の授業の一環として行う、学生企画によるプログラムも実施しています。また、実習に向けての体験としても学生が参加・協力を行います。参加者の方は学生が参加すると、とても生き生きと過ごされます。
開始当初の参加人数は10名強で、一桁の時もありましたが、新型コロナウイルス感染症予防のための休止前は40名超の方が参加されました。参加者はすべて女性のご年配の方々で、稀に男性も参加されますが、定期的な参加には至りません。
今後、感染症対策を整え次年度以降での再開を予定しています。再開にあたっては、感染症対策に対応した活動内容を考えるとともに、参加者の方が意味のある時間を過ごせるよう、カフェの場を再構築していきたいと考えております。
私は、今年で作業療法士として28年目になります。作業療法士になる前は、全く分野の異なる仕事をしておりました。縁あって作業療法士の資格を取り、精神科の病院のデイケア(退院して外来生活を送る方のためのリハビリテーション施設)に就職しました。
私の勤めていたデイケアは、当時1日30名強の方が利用されていました。そこでは、1週間単位で活動の内容が組まれています。学校の時間割をイメージしていただくとよいと思います。それ以外にバスレク、キャンプ、文化祭といった年中行事も行います。1週間の中にはいろいろな内容のプログラムが行われています。読書とお喋りをするグループ、ボランティアサークル、スポーツ、ビデオ鑑賞、太極拳、毎回決まったメンバーで話をするグループ、革細工、音楽、映画鑑賞、陶芸etⅽ。
デイケアのプログラムは、その活動の内容やグループの性質により、3つに大別されます。①人のいる場に慣れる(人とともにいることに安全感・安心感を覚える)②技術・技能(対人、作業)を身に付ける③自分自身や、障害についての理解を深めたり、学んだりする。デイケアの利用者(デイケアではメンバーと呼びます)は、担当スタッフとの面談を通して、ご自分のリハビリテーションの目標に合わせて参加の日数、参加するプログラムを選びます。
メンバーは、デイケアの活動などを通して、多くのことを体験され、成長されていきます。例えば、音楽のグループで、初めの頃はスタッフを頼りにその横に座っていた人が、やがてスタッフから離れて座るようになり、自分の歌いたい曲をリクエストし、グループの中でソロを歌う。人は変わっていく、人の中には変わっていく力があるのだということを私は深く学びました。
作業療法士は人の成長にじっくりと寄り添い、支援することのできる職業です。
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担当講義PICKUP
基礎作業学実習
この科目では実習として、作業療法の治療に用いる作業活動、陶芸、革細工、村上木彫堆朱、園芸などを実際に体験します。人は生活の中で、絶えず心身のいろいろな機能を使っています。作業療法では、作業活動を支援の手段として用います。この科目では、作業活動を行うとともに、作業活動を行うための方法、注意点、どのような心身機能が作業活動を行うために必要とされるのか、その作業活動の持つ意味などを学び、自らの体験をもとにして作業分析を行います。また、実際に自分自身が作業活動を行うことは、疑似的に作業療法を受けることとなり、対象者が作業療法を受けることの意味を理解することに繋がると考えています。作業についての理解を、体験を通して深めていくことがこの科目の目的です。
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