SDGsへの取り組み|新潟リハビリテーション大学

芸術を通した異文化理解への挑戦


平和のための「異文化理解」の必要性

今、世界は至る所で争いが起こっています。

言葉の壁を越えたところに、芸術があり、その先に文化があります。相手を理解しようとする事が、自己理解に繋がり、統合されていく過程に、平和への道があると信じています。

『リハビリテーション』の元々の意味は、『魂の尊厳の回復』です。芸術療法は、心のリハビリテーションのひとつ。互いの尊厳を尊重しつつ、世界共通の心と身体の医療を目指す本学の精神は、特に大学院の独特なコースに現れていると思います。

私の担当する大学院の授業では、様々な文化に携わる方々のご協力を得て、その年々のプログラムの充実も図っております。中国茶の先生、裏千家の教授、障害児教育で音楽を担当されている先生、プロの能楽師の先生、お琴の先生…。一流の芸術家の方々に学び、その上で、非言語的アプローチについて学びます。

専門的には科研費研究で、自閉症スペクトラム障害の大学生達の芸術療法を通して、彼らの表現形式について研究を行っていました。現在も研究を続けていますが、芸術を治療に用いる事の難しさを痛感する日々です。

心と身体をきちんと診ること

中医学では5000年以上前から、心と身体は切り離せないものとして、世界を取り巻くあらゆる事象を医療に取り入れてきました。今もその問診の緻密さから、学ぶことが沢山あります。私の漢方医の師匠の問診では、いつもその奥深さに打ちのめされます。ルーツである巫女から、中医は、内科である漢方医と外科である鍼灸医とに分かれていった流れからもわかるように、精神性がとても重要なのです。名医と呼ばれる方々の問診は、時間をかけて本当に丁寧にお話しを聞き、その証を見極めながら処方をなさいます。その経験も今の私の面接スタイルに影響を与えているのだと思います。心理のカウンセリングにおいて、心と身体のバランスを取る、こうした技術をお伝え出来れば良いと考えながら、授業を行っています。

様々な教育研修の成果を、次の未来に伝える使命

芸術療法については、故宮本忠雄先生の元で学ばせていただき、その後山下清を見出した芸術療法のメッカである式場病院で、今度は現象学の故宇野昌人先生に臨床技術を教えて頂く幸運に恵まれました。誰に何を学ぶかというのは、人生を大きく左右する事だと思います。思えば、若い頃は本当に色々な勉強をさせてもらいました。イルカセラピーの資格を取りに行ったり、TEGの開始と重なり、国府台病院で1週間のTEG宿泊研修というハードなプログラムにも行かされました。救急医療の研修では、1カ月千葉の総合病院でドクターヘリに乗ったり、丸田先生のコホート研究会、フランスやスイスでの留学や、芸術療法はRADAやローハンプトン大学で学んだりしつつ、沢山の良い師に恵まれての今日があります。

ここで学ぶ学生の方々に、こうした師から学んだ技術をお伝えするのが私の使命だと考えています。学ぶ事は時に苦しくもありますが、学びたいという気持ちが乗り越える力をもたらしてくれるはずです。その先の広がる未知の世界へと、皆さまを誘うことができたなら教師冥利につきます。世界は広く、心はもっと軽くなって飛べるのです。学問の争いも、世界の争いも超越して、あなただけの学びを楽しんで、心豊かに生きて頂きたいと思っております。

担当講義PICKUP

アートセラピー特論〔大学院〕

例えば、1杯の茶を喫する癒しは世界共通の文化です。茶道はその人の「生」に深く結びつきながら芸術へと昇華される1面を持ちます。
茶道という枠を通して、人との距離、非言語的対話や癒す心などを学び、日常の診療に活用できるように指導します。

他にも、アートセラピーで取り上げる内容は沢山あります。興味がある分野について、是非一緒に学びましょう。

掲載日:2022年10月13日