SDGsへの取り組み|新潟リハビリテーション大学

事例からでもエビデンスは構築できるのか?

丁子 雄希
リハビリテーション学科  作業療法学専攻 准教授

事例からでもエビデンスは構築できるのか?

我々の医療福祉の分野において、エビデンスに基づく実践が求められて久しい。通常、エビデンスの構築のためには、大多数のクライエントのデータを採取しなければならないが、時間的・金銭的負担が大きいことが課題となっている。また、大多数のデータを用いるため、個人の特性要因が除外されやすく、全体の平均値のいったんとして扱われてしまう。しかし、私達の対象とするクライエントは、障害のあり方や生活ニーズなどが個々によって異なるため、群間要因としてデータを収集すると、個の特性が活かされなくなってしまう。そこで、近年シングルケースデザインという手法が再注目されている。

シングルケースデザインは、1事例をからでもエビデンスを構築できる手法であり、仮説検証型デザインと言われている。シングルケースデザインは、1事例に対して介入しない時期(A期)と介入期(B期)を設け、両期の違いを客観的に比較することができる。これまでに私は、シングルケースデザインに関する講演や、論文・書籍を発刊しており、全国の作業療法教育の一助に携わっている。個を科学する視点から、クライエントの生活を学んでみませんか?

あなたにとって意味のある生活とは?

みなさんにとって「意味のある生活」とは何でしょうか?夢を追いかけること、家族と平穏に暮らすこと、お金を稼ぐことなど、人々によって様々な意見があるかと思います。しかし、これらすべてに共通することは、意味とは「当人」が決定することだということです。私達作業療法士は、クライエントにとって意味のある生活(作業)を支援する専門家であり、クライエントの真の思いを引き出しながら支援を行っていきます。たとえ、障害のある方でも、その人にとって意味のある生活が送れるかどうかが、生活の質にとってとても重要となります。

作業療法のアプローチ手段の一つに、クライエント中心の実践があります。クライエント中心の実践では、作業療法士とクライエントの信頼関係を構築した上で、クライエントの生活課題を共有し、協働して取り組んでいきます。私の取り組んでいる研究では、クライエント中心の実践を促通するツール(Collaborative relationship scale between clients and occupational therapists , CRS)を開発し、国内外で高い成果を得ています。作業療法を学ぶことは、クライエントにとっての意味のある生活を考える機会にもなるのですが、あなた自身の生活の意味を振り返る機会にもなります。

丁子 雄希|リハビリテーション学科  作業療法学専攻 准教授

 

学位の取得年 博士(作業療法学) 2021年(令和3年)
最終学歴 東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法科学域博士後期課程
所属学協会等 日本作業療法士協会、富山県作業療法士会、作業遂行研究会、日本作業行動学会、日本臨床作業療法学会、日本作業療法研究学会、作業科学研究会

担当講義PICKUP

作業療法理論学

作業療法理論学では、作業療法で用いる評価や治療方法についての根拠となる考え方を学んでいきます。私達の臨床実践は、作業療法士の主観によって提供されるものではなく、これまで培ってきた研究成果(エビデンス)に基づいています。本講義では、臨床現場で活用する概念的実践モデルを種々紹介し、評価や治療法の考え方、体験を通して学びを深めていきます。例えば、作業療法分野における代表的なモデルとして、人間作業モデルがあり、人が意味のある生活を送るために必要不可欠な要素を取り上げ、それに基づきアセスメントを行っていきます。

関連リンク

作業療法学専攻(OT)

研究者情報

掲載日:2022年10月11日