現場主義の実践と研究活動
1978年、最初に就職した病院は、地域の第一線病院でありながらも地域リハビリテーション(以下リハ)にも先駆的に取り組んでいました。訪問リハの医療保険制度がない時代に病院持ち出しで患者宅の家庭訪問評価(home evaluation)などを実施していたのです。その病院での3年間の経験は「三つ子の魂百まで」でした。大学教員になっても研究者というよりも地域高齢者を対象にした地域リハ活動の運営・組織化、患者・家族を直接指導する現場主義での実践者に魅かれていました。
そこで2001年に赴任した前職の大学では、転倒予防教室を県内の市町村と協力して、定期的な講演、運動教室、介入前後の体力測定を実施してきました。その後、介護予防事業では、町内会単位での「住民主体の通いの場」の立ち上げ、運営・組織化、住民サポーター育成などについて、新潟県や区市町村事業に関わってきました。このような経験を「転倒予防10種運動」の著書・ポスター、「ロコモ予防事業地域活動マニュアル」、「ロコモ予防のための運動プログラム」(DVD)、「新潟弁ラジオ体操」(DVD)などのツールを作成して活動を深堀し、普及することに努めてきました。このような活動は、本学においても引き続き地域貢献活動として進めています。
また、2011年からは、新潟大学大学院環境予防医学分野(中村和利教授)の下で地元の村上地域を中心とした「村上健康コホート調査」に本学の教員とともに協力しています。この研究グループでは加齢性疾患、生活習慣病の予防を目的に地元村上地域のデータを分析して国際誌に多くのエビデンスを公表しています。
若い時の苦労は将来の糧
学生時代は、人生で最もエネルギーのある時でしょう。知的刺激や知的喜びがあり、アルバイトで社会の厳しさに触れることもあり、恋愛もあり、楽しいコンパもあります。有り余るエネルギーを学びに、遊びに、様々な経験に費やしてほしいと思います。臨床実習から帰ってきたときの学生の成長には驚きます。国家試験対策で必死に学習している姿が思い浮かびます。大リーガー大谷翔平さんの練習ノートには、「一生けんめい」がたくさん出てきます。学生は、どんなことでも全力でガンバルことが人生の糧になることを、後の経験で知ることになるでしょう。「若いときの苦労は買ってでもせよ」ということです。私がどの時代に戻りたいと聞かれたら、迷うことなく自由があり、夢もあり、喜びもあった、そして責任も伴った学生時代に戻りたいと答えます。
これから臨床の現場に出る4年生へのメッセージとして、母校の学院長の講話の中からの言葉を紹介します。「時に癒し しばしば支え つねに慰む」(砂原茂一著、『医者と患者と病院と』岩波新書)
大学の4年間はあっという間に過ぎますので、ぜひ充実した学生生活を過ごしてもらいたいと思います。
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老年期理学療法学[学部]
骨、関節、筋肉、神経などの運動器、肺などの呼吸器、心臓、血管などの循環器、心理・精神機能などは、加齢に伴い様々に変化します。これらの加齢性疾患は、要介護状態に至ることで大きな医療・社会的問題となっています。本授業では加齢性疾患の概要について講義して、理学療法に関連した疾患、状態を説明し、健康増進・介護予防、リハビリテーションについての知識を理解します。