大澤先生コラム【7月】

「“ボケに効く薬”への期待」   大澤源吾 (June 18,2019)

 

昨年の暮から今年の1月にかけて図書館の新刊雑誌閲覧棚にあった日経サイエンス(平成31年1月号)だから、読まれた方も多いだろうと思う。

“神経免疫学”というタイトルが目を惹いた。Kipnis教授(Virginia大学)が、視覚や聴覚などヒトの五感と並んで免疫系が体内外に微生物を始めとした分子情報を脳に伝え、神経細胞と免疫系が連絡し合って共同で生体を護っているとする総説的な解説である。

この“神経免疫学”の解明・進展が、自閉症からアルツハイマー病などの多くの神経疾患に対する新しい治療法の開発の“鍵”となるだろうことを予言していたのである。

 

さらに、併載された日本の精神科医達のもう1つの論上で、脳内の小膠細胞(ミクログリア)がこの神経免疫学の主役として働き、脳内のさまざまな環境変化に敏感に反応して活性化することが統合失調症やうつ病などの精神疾患や精神症状の発症につながるという“ミクログリア仮説”を提唱しているのである。

古くから細菌感染病に対して使ってきた抗生剤がそれまで難治であった精神症状の消失をもたらした事例まで添えてあるではないか。

 

“呆けに効く薬”は小生にとっては間に合わぬ話であろうが、学生諸君の時代にはちょっとした度忘れ、物忘れが日頃の生活習慣ないしは食事内容で予防できるときがやってくるのではあるまいか。

 

恐らく匂いのつよい、苦みのきついものであろうと勝手に想像しながら、研究の進展を切に祈っている。